サンショウモ

胞子で増える、 浮き草なシダ

  • 田んぼや池に浮いている。
    写真 / 2024.10 新潟県 S.Ikeda

  • 茎をすこし枝分かれさせて葉を広げる。
    葉は2種類、 水上葉と水中葉がある。
    写真 / 2024.10 新潟県 S.Ikeda

  • 水上葉(中心の丸いのは水滴)。
    表面に毛が多く、 これで水をはじく。
    対になって出て、 空気が詰まっていてよく浮く。
    写真 / 2024.10 新潟県 S.Ikeda

  • 水から出したもの。
    茶色い根っぽいのは水中葉。
    葉が変化したもので、 本種は根をもたない。
    写真 / 2024.10 新潟県 S.Ikeda

  • 水中から。
    丸いのは胞子のう果。
    水中葉につけ、 最上部の1個は大胞子のう果、 それより下はふつう小胞子のう果になる。
    写真 / 2024.10 新潟県 S.Ikeda

  • 池一面を覆う見事な光景。
    このような場所は少なくなってしまった。
    写真 / 2024.10 新潟県 S.Ikeda

  • 全体およびサンショウの葉との比較。
    より小さいけど、 確かにちょっと似ている?
    写真 / S.Ikeda

  • 水上葉の表面。
    たくさんの毛束が列になってつく。
    写真 / S.Ikeda

  • 水上葉の毛束。
    アームのように曲がるが、 中心でくっつかない。
    外来種オオサンショウモは中心でくっつく感じ。
    写真 / S.Ikeda

  • 胞子のう果。
    こげ茶色の毛が生えた包膜の中に胞子のうがある。
    切ってみると…
    写真 / S.Ikeda

  • 一番上のものに大胞子のうをいくつかつくる。
    下のものには小胞子のうがたくさんできる。
    写真 / S.Ikeda

  • 大胞子のうと小胞子のう。
    いずれも表面が網目状で、 この中に胞子ができる。
    写真 / S.Ikeda

特徴

水面に浮かんで生活する水生シダ。 サンショウの葉っぱに例えられた姿をしていて、 表面の毛で水をよくはじきます。 水中に伸びている茶色い根っぽいのは葉が変化したもので、 根をもちません。 シダなので花は咲かず、 秋になると水中に丸い胞子のう果を多くつけます。
 
大きさ : 茎長3~20cm、 葉長8~15mm
観察の時期 : 野外では春~秋(一年草)
生える場所 : 水田や池沼
分布 : 本州、 四国、 九州、 台湾、 ユーラシア大陸広域

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。 ​

人間活動で絶滅危惧種に

多くの水草は開発や除草剤などによって大きく数を減らしています。 サンショウモも例外ではなく、 2020年の環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
 
また近年、 園芸用に売られている南米原産のオオサンショウモが各地で見つかる事例が相次いでいます。 こちらはより大きく、 水上葉が大きく谷折りになっていることが多く、 表面の毛束が先でくっつくことが主な特徴。 元からいる水草の生育を脅かす恐れがあるため、 育てられなくなっても野外には絶対に放さないようにしましょう。

いろいろ観察してみよう!

サンショウモには面白い特徴がいくつかあります。 珍しい水草となってしまいましたが、 見かけたらぜひ観察してみてください。
 
①2種類の葉をつける
緑色の水上葉がよく目立ちますが、 もう1つ水中葉もつけます。 下に多く出ている根っぽいものがまさにこれ。 サンショウモの根は退化してなく、 葉がその役割をしているのです。 また、 植物体が転覆しないようにする重りの機能もあります。
 
②水上葉の水をはじく毛
水上葉の表面をルーペや顕微鏡で見ると、 束になった毛がたくさんあることがわかります。 これで水をはじいて沈むのを防ぐことができます。
 
③2つの大きさの胞子
水中葉に丸い胞子のう果をいくつかつけますが、 基部に近いものは大胞子、 それ以外はふつう小胞子をつくります。 これを異形胞子性といい、 大胞子は雌、 小胞子は雄の役割を果たします。 同じ特徴をもつシダ植物はほかにイワヒバなどのイワヒバ科、 ミズニラ、 アカウキクサ、 デンジソウなどがあります。

  • 水上葉の表面。
    アーム状の毛束がたくさんある。
    写真 / S.Ikeda