ヤマハゼ

超!格式高い染料がとれる木

特徴

天皇陛下が重要な行事の時に着る黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)という衣は、 この木の幹の真ん中にある黄色い部分を使って染めます。 その色は品の良い赤茶がかった黄色になります。
ウルシの仲間なので、 かぶれやすい人は注意が必要です。
よく似たハゼノキとは、 葉や冬芽に毛があることで区別できます。

みんなの投稿

以下の情報は、 関東地方を基準にしています。 エリアによって1ヶ月くらいの差があります。

樹形

高さ5~6mになる木が多いですが、 大きいものは10mくらいになります。

  • 細長い小葉が羽根状に付いていて、 サラッと感がある涼し気な樹形になる
    写真 / 2022.5.21 MayaN

長い葉脈と短い葉脈が交互に出やすい点がチャームポイント。 葉脈のくいこみでシワっぽく見えます。
茎や葉には毛があり、 触るとフカフカしています。 (よく似たハゼノキには毛がありません。 )
秋の紅葉は燃えるように赤く染まり、 とても素敵です。

  • 互生の奇数羽状複葉
    写真 / 2021.5.23 千葉県松戸市 MayaN

  • 葉柄は赤みがかり、 葉の表は黄緑色
    写真 / 2022.5.21 千葉県松戸市 MayaN

  • 葉の裏。 長い葉脈と短い葉脈が交互に出る
    写真 / 2023.8.22 千葉県松戸市 MayaN

  • 紅葉がとても美しい
    写真 / 2019.12.11 千葉県美浜区 MayaN

  • 芽吹きも赤紫色で美しい
    写真 / 2021.4.1 千葉県万葉植物園 MasakoT

  • 春、 木全体が新芽の赤紫色に包まれる
    写真 / 2021.4.1 千葉県万葉植物園 MasakoT

  • 赤味の少ない新芽の個体もある
    写真 / 2024.4.12 千葉県松戸市 HiromiM

  • 若葉はすっかり緑色に
    写真 / 2021.8.21 千葉県松戸市 MasakoT

花は緑色で、 雄花の付く木と雌花が付く木は別々です。 雄花は線香花火のようにおしべを勢いよく広げ、 花びらが反り返ります。

  • 葉に守られるように多数の花を葉の付け根に付ける
    写真 / 2021.5.23 千葉県松戸市 MayaN

  • 雄花。 花火のように、 花糸が大きく開く
    写真 / 2022.5.21 千葉県松戸市 MayaN

  • 雌花。 雄花より少なめに付く
    写真 / 2021.4.21 千葉県加曾利貝塚 MasakoT

ちょっとつぶれたエンドウ豆ような緑色の実(熟すと茶色)を付けます。 割ると白いロウをふくんだ部分がありますが、 残念ながらハゼノキと違ってロウソク作りには向きません。 実を割る時には、 かぶれないように手袋をすると安心ですよ。

  • えんどう豆ののような実がつく、 毛はない
    写真 / 2021.6.12 千葉県21世紀の森と広場 MasakoT

  • 7~8㎜の緑色の実がたくさん付く
    写真 / 2021.6.12 千葉県21世紀の森と広場 MasakoT

  • 10~11月に熟した実。 つややかだった実が蝋をかぶりにごった色になった
    写真 / 2021.8.21 千葉県松戸市 MasakoT

幹・枝

葉が付くくきや若い枝は赤みがあります。 老木になると樹皮は縦長にさけて、 はがれることもあります。

  • 縦長に裂けた老木の樹皮
    写真 / 2024.4.14 千葉県松戸市 HitomiM

  • 落葉すると枝の湾曲が目立つ
    写真 / 2021.1.21 千葉県船橋市 MasakoT

冬芽・葉痕

枝の先に付く冬芽は、 ふっさふさの赤茶色の長い毛で被われます。

  • 葉痕は5mm以上で三角形~ハート形
    写真 / 2021.2.5 千葉県船橋市 MasakoT

  • 落葉前の冬芽は既にふさふさ
    写真 / 2020.10.13 千葉県21世紀の森と広場 MayaN

  • ヒラタアブの仲間が一休み
    写真 / 2021.2.10 千葉県松戸市 MasakoT

  • 芽吹いてどんどん伸びる新葉
    写真 / 2022.4.8 千葉県21世紀の森と広場 MasakoT

  • たくさんつく芽も、 すべて毛で覆われる
    写真 / 2021.2.10 千葉県松戸市 MasakoT

人との関わり

幹や枝がしなやかなので、 昔は弓の材料としていました。
今では寄木細工に使われる木です。

名前の由来

昔から日本に生えていてハゼと呼ばれていましたが、 16〜17世紀に中国からロウソクの材料としてハゼノキが持ち込まれ、 有名になってしまったので、 ハゼノキと区別するためヤマハゼと呼んだことに由来します。

  • 名前を取られてしまったハゼノキとは本当によく似ているが、 葉や冬芽の毛の有無で区別できる
    写真 / MasakoT

その他の情報

・天皇が即位の礼で着用されていた黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)という衣はヤマハゼの幹の中心の黄色い部分から採れた染料で染められています。
・似た木にはハゼノキ、 ウルシ、 ヤマウルシ、 ヌルデがあります。

  • 即位の礼・天皇が着用されている黄櫨染御袍という衣はヤマハゼの幹から採れた染料で染められている
    写真 / photolibrary より

性格

ハゼノキほどではないですが、 ヤマハゼも寒がりの木です。 みんな(他の落葉樹)より早く紅葉し、 落葉します。
例えば、 南国の冬はそんなに寒くはないのに、 現地の人は「寒っ」とダウンを着込むような感じです。 冬支度が早いので、 「もう?寒がりだなー」と微笑んでしまいます。
ウルシの仲間なのでかぶれることもあるようですが、 かぶれないこともあるようです。 かぶれやすい人は注意が必要ですが、 葉や枝を切って出る汁がつかなければ、 そこまで怖がる必要はないかもしれません。

体験・遊び

木の切り株で切った面の色が黄色い物があれば、 それはヤマハゼかハゼノキかヤマウルシか?です。 切り株の色を見てみましょう!(太くないと黄色い心材はありません)
細い幹で切り口が黄色い木はナンテンやヒイラギナンテンなどがあります。

  • これはハゼノキの断面ですが、 ヤマハゼも同じような色
    写真 / 2021.12.5 東京都 湧口

  • ヒイラギナンテンの切り口も黄色い
    写真 / 2021.3.6 埼玉県狭山市 minaei

関わりが深い生き物

花は虫たちに人気があり、 ハナバチなどいろいろな昆虫がやって来ます。
実は脂肪分が多く、 いろいろな野鳥の好物です。 カラスもよく食べに来ます。

見られる場所

執筆協力 : 岩谷美苗