ヤエベニシダレ

華やかな姿と花色が一番人気‼

特徴

エドヒガンという一重咲で野生種のシダレタイプの中から選択された、 江戸時代からある八重咲の代表的な園芸品種です。
枝垂れる性質は植物ホルモンの関係で枝の木質化が遅れる変異に由ります。 伸びた枝が柔らかいため自らの重みで枝垂れます。 枝垂れた枝はゆっくりと木質化して次の年には固くなり、 下向きになった枝の芽は更に下に向かって伸びるのです。

以下の情報は、 関東地方を基準にしています。 エリアによって1ヶ月くらいの差があります。

樹形

苗木は枝や芽を台木に接ぎますが、 若い枝は柔らかく直ぐに枝垂れてしまいます。 そのため、 支柱を立てて下向きの枝を起こして硬くなるのを待つため、 全体的にくねった樹形になります。

  • くねった樹形が風情を感じさせる
    写真 / 2016.4.10 京都市右京区常照皇寺 石井誠治

  • 細く長く枝垂れる枝をたくさん出す
    写真 / 2022.4.3 千葉市泉自然公園 MayaN

  • 風格を醸し出す太い枝の曲線が古いお寺の雰囲気によく似合う
    写真 / 2007.4.10 千葉県印西市 MasakoT

ソメイヨシノより細長い葉っぱで先端がとがります。

  • 花が満開の時期に新芽が伸びだす
    写真 / 2019.4.9 東京都杉並区下高井戸 石井誠治

  • 細長い葉がたくさん付いて、 枝と共に風になびく
    写真 / 庭木図鑑植木ペディア

花びらは20枚ほどの八重咲で花色はシダレザクラより濃い桜色をしています。 蕾の時は紅色ですが時間とともに白っぽくなります。

  • 濃い桜色のグラデーションが美しい
    写真 / 2022.3.29 千葉県船橋市 MayaN

  • 枝垂れた枝にたくさん付く
    写真 / 2012.4.10 東京都新宿御苑 石井誠治

  • 20枚ほど付く花びらは先が割れている
    写真 / 2022.4.3 千葉市美浜区 MayaN

  • 若干、 がく筒はエドヒガンのようにくびれる
    写真 / 2022.4.3 千葉市美浜区 MayaN

初夏に黒く熟して苦味があります。

幹・枝

幹や枝はくねっていることが多いです。
エドヒガンの性質を引き継ぎ、 幹は縦にすじが入ります。

  • 縦に浅く筋が入る幹
    写真 / 2022.4.2 千葉市美浜区 MayaN

冬芽・葉痕

白っぽい毛がふさふさしているのは元祖エドヒガンと同じです。 枝が細いので冬芽も小さめですが、 小さな葉痕のお顔も見ることができます。

  • 白っぽい毛がよく見える
    写真 / 2024.1.26 東京都新宿区 Tamacha

  • 枝先より下の芽が枝に寄り添う
    写真 / 2024.1.26 東京都新宿区 Tamacha

人との関わり

枝垂れる枝に花が下がって間近で見ることができ、 ソメイヨシノより少し遅く満開になる華やかな花色と八重咲なので、 シダレザクラの代表として植栽されます。

名前の由来

蕾のとき紅色で、 咲くと桜色になる八重咲の花を咲かせ、 枝が枝垂れるタイプのサクラという意味に由ります。

その他の情報

八重咲の園芸品種ですが、 花粉も子房も正常なのでサクランボがなります。 近年、 この実生から「舞姫」という枝垂れない品種が作出され、 生育が旺盛で花着きがよいので、 各地に植えられることが増えています。

  • 人気の枝垂れないヤエバニシダレ「舞姫」
    写真 / 石井誠治

性格

枝垂れる性質の木は日当たりが良くないと樹勢が弱り、 花付が悪くなります。

  • 周りが開けた場所が良い
    写真 / 2022.4.2 千葉市美浜区 MayaN

体験・遊び

花びらよりも雌しべが先に成熟するので、 蕾の時に黄色い雌しべがちょこっと紅色の花びらの先に見えています。 数日の間、 見えていますから観察してみましょう。

  • 黄色くて短い雌しべが蕾の先っぽに飛び出ている
    写真 / 石井誠治

  • 蕾から出たメシベが二本見える花にはふたつのサクランボがなる
    写真 / 石井誠治

関わりが深い生き物

サクラ類は虫がよくつき、 葉は穴だらけになります。

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執筆協力 : 石井誠治