西表島には節祭(しち)という、 旧暦の10月(現在の11月)に毎年行われる伝統的な行事があります。 そこで「シチカッツァ(シチカッチャー)」と呼ばれる蔓を、 家の柱や農耕具などに魔除けとして結ぶ風習があります。 これは方言で、 ナガバカニクサとイリオモテシャミセンヅルをまとめた呼び名です。
ちなみに2種は近縁で、 混生することもあり外見が似ていますが、 ナガバカニクサは小羽片が手のひら状に細く伸び、 表面がカサカサした質感のため、 容易に区別できます。 なお、 琉球ではどの島でもナガバカニクサの方が普通に見られ、 シチカッツァに使われるのもこちらが一般的。 西表島でも、 イリオモテシャミセンヅルを見かける頻度はそれほど多くないです。
特徴
熱帯のつる性シダで、 地中から伸びる黄緑色の葉は、 長さが数メートルになります。 より身近なカニクサに似ていますが、 羽片は3~6対ほどの角丸三角状の小羽片からなり、 のっぺりとした質感があります。 名前は日本の南西端近くにある西表島と、 長い葉が三味線の弦に例えられたことに由来します。
葉の長さ : 3~30m、 時にそれ以上になる
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 明るい湿地など
分布 : 琉球(宮古島・石垣島・西表島・与那国島)、 台湾、 中国、 東南アジア、 アフリカなど
シチカッツァ
海外では侵略的外来種
日本では祭事に用いられ、 歴史的にも重要なイリオモテシャミセンヅルですが、 アメリカ合衆国ではまったく違う扱いを受けています。 現地では湿地に生える希少植物を駆逐する「侵略的外来種」としてひどく嫌われているのです。
もともとこの植物は、 アジアやアフリカなどの旧世界(コロンブス以前から知られていた地域)にのみ分布していました。 ところがアメリカ南東部のフロリダ州では、 観賞用として持ち込まれたものが1965年ごろに野生化し、 その後も胞子の拡散で急速に広がってしまいました。 被害は深刻で、 湿地林に入り込むと、 全面をびっしり覆ってしまい、 大木をも枯らしてしまうことがあるほど。 イリオモテシャミセンヅルほどではありませんが、 カニクサも同様にこの地で野生化し、 被害を起こしています。 このため、 天敵であるツトガ科のガの一種を放して葉を食べさせたり、 除草剤によって枯死させるなどの取り組みが行われています。 しかし今も防除しきれておらず、 その費用で年間200万ドル(日本円で3億円)以上の損失があるという報告もあります。
