トネハナヤスリは利根川や淀川を中心とした河川敷に分布が限られ、 数も少ない植物です。 しかし、 自生地では冬に火入れをしてヨシ原を焼くと、 その春にたくさんの葉が出現し、 一面を覆うほど群生することで知られています。
ヨシ原は放置すると、 枯れた茎葉が長く残って地表が暗くなりがちです。 一方、 野焼きを行うと、 春の地表が明るく保たれ、 光合成しやすい環境になります。 このほかにもさまざまな恩恵があると考えられており、 野焼きは本種の生育にとって重要な要素とされています。 ただし、 それでもヨシの成長は速く、 6月には地表が暗くなってしまいます。 そのため、 トネハナヤスリはこの頃までに地上部を枯らし、 翌年の春まで休眠する生活サイクルをとっています。
本種の自生地として特に有名なのが、 栃木県の渡良瀬遊水地です。 野焼きによって、 ここでは最大規模のトネハナヤスリの群生を見ることができます。 観光にもおすすめで、 ゴールデンウィーク頃に観察に訪れるのがおすすめです。
トネハナヤスリ
野焼き後にたくさん出てくるシダ
特徴
関東を流れる利根川にちなんだシダ。 ハナヤスリ類は共通して、 胞子を飛ばす棒ヤスリのような胞子葉と、 光合成のための栄養葉に分かれています。 栄養葉が卵形かつ柄のあるところでコヒロハハナヤスリと似ていますが、 本種の方が栄養葉は一回り大きくて葉柄が1cm以上と長く、 6月には地上部が枯れて来年春まで休眠します。 日本固有種です。
大きさ : 高さ8~25cm、 栄養葉は長さ2~9cm
観察の時期 : 春(夏緑性)
生える場所 : 野焼き後の明るい河川敷
分布 : 本州(宮城・関東・近畿)
※正確な種の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。
