マルハチ

小笠原を代表する木生シダ

  • 明るく湿った場所を好む。
    いかにも南国らしい雰囲気を持ったシダ。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 幹のてっぺんから多くの葉を広げる。
    光を求めて幹を曲げていることが多い。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 1枚の葉。
    大きいと、 長さ2 mになる。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 葉先。
    かなり急に縮まって、 短く尖る。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 羽片。
    たくさんの小羽片に分かれる。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 小羽片。
    さらに切れ込んでU字の裂片となる。
    写真 / 東京都父島 S.Ikeda

  • 葉裏。
    胞子のう群をつける。
    ただし背の低い株ではほとんどつけないので、 観察が難しい。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 胞子のう群は円形で、 脈寄りにつける。
    包膜はない。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 裂片裏。
    軸上に基部が袋状にふくらんだ鱗片をつける。
    ヒカゲヘゴは毛をつける。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 光に透かした葉裏。
    葉脈は二又になることが多い。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 幹てっぺんの葉柄基部。
    明るい茶色の鱗片で覆われる。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 葉柄。
    鱗片があるだけか、 時にイボ状の突起がつく。
    ヘゴほど鋭いトゲはつけない。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 葉軸。
    イボ状の突起が多くつく。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 羽軸。
    イボ状の突起がまばらにつく。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 幹。
    不定根で覆われ、 たくさんの丸い葉痕がつく。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 葉痕。
    中に維管束痕がつく。
    逆さに見ると八の字っぽくなる。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 背の低い株。
    この時は葉痕がわかりにくく、 ヘゴと間違えやすい。
    トゲの鋭さを確認しよう。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 新芽。
    明るい茶色の鱗片に覆われる。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

  • 幼株の葉。
    父島では野生化したノヤギによる食害が問題となっている。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

特徴

ヤシの木のようになるヘゴ科の木生シダで、 小笠原諸島の固有種です。 丸い模様を多くつけた幹のてっぺんに、 パラソル状にたくさんの大きな葉を広げます。
ヘゴとは幹の模様がよく見えて葉柄のトゲが鋭くないこと、 琉球に多いヒカゲヘゴとは葉裏に毛がなくて袋状にふくらんだ鱗片をつけるところで区別できます。
 
大きさ: 高さ5~12m、 葉の長さ1~2.5m
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 湿度のある林縁や疎林
分布 : 小笠原(弟島・父島・母島・火山列島)

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。

丸八を見つけよう

マルハチの幹をよく見てみると、 丸模様の中に逆さに八の字の模様があることがわかります。 ド直球ですが、 これが名前の由来です。
 
詳しく解説すると、 丸いのは幹から葉が落ちたときにできる葉痕で、 その中にあるのは水や養分を運ぶ維管束の痕です。 ちなみに小笠原の父島と母島に自生しているヘゴ科はヘゴ、 メヘゴ、 マルハチの3種類。 その中でこのような面白い特徴を持ったものはマルハチしかないので、 これを目印にぜひ探してみてください。

  • マルハチの幹。
    丸い葉痕の中に、 逆八の字の維管束痕がある。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.Ikeda

たくさんの枯死木

小笠原を象徴するマルハチですが、 様々な理由で近年倒木や枯死が相次いでいます。
 
まずは風の影響。 大きい台風が島に直撃すると、 幹が折れてしまうことがあるほか、 塩害によって葉が枯れてダメージになることがあります。 そして外来種の影響も大きいです。 国内外来の樹木で成長の早いアカギが小笠原ではたくさん野生化してしまっており、 光獲得の競争に敗れて枯れることがあります。
 
そのため小笠原の林道を歩いていると、 立ち枯れて幹だけとなったマルハチをよく目にします。 さらに更新に必要な幼株も、 以前から野生化が問題となっているノヤギに食べられてしまうことがあります。 これからもマルハチの生えている森を見るために、 しっかり守っていく必要がありそうです。
 
ちなみにちょっと申し訳ないですが、 枯死木が多いのを逆手にとって、 その幹の断面構造を現地で詳しく観察することも可能です。 外側のびっしりついた不定根やその内側の網状中心柱など、 一般的な樹木とは異なる面白いつくりを見ることができます。 かなり古いですが、 以下の論文に詳しい記載があります。
 
小倉謙 (1926) まるはちノ構造. 植物学雑誌, 40(470), 69-90.

  • 折れたマルハチの幹。
    このような痛々しい姿が島内で多く見られる。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.ikeda

  • 幹の横断面。
    一般的な樹木に見られる年輪がない。
    外側に不定根がびっしりあり、 その内側に網状中心柱という維管束などの集まりがある。 中心の空洞には、 生きてるときに柔組織がある。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.ikeda

  • 比較的新鮮な幹の縦断面。
    白っぽいのが、 生きた細胞の集まりの柔組織。
    写真 / 2026.8 東京都父島 S.ikeda

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