ヘゴ

本州にも生えるトゲトゲの木生シダ

  • 明るい林縁に生える。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

  • 1枚の葉。 大きいと長さ2mになる。
    軸部分は鱗片で茶色っぽい。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

  • 葉の小羽片。
    フチに鋸歯がある。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

  • 葉裏に胞子のう群をつける。
    大きな株でないと中々つけない。
    写真 / 2021.9 鹿児島県奄美大島 S.Ikeda

  • 胞子のう群は円形。
    中心の脈寄りにつける。
    包膜がある。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

  • 葉柄。
    大きなトゲが多く、 刺さると痛い。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

  • 葉軸の表面。
    細かい茶色の鱗片が多くある。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

  • 葉軸の裏面。
    小さなトゲがまばらにある。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

  • 枯れた葉が多く残って幹を隠す。
    本種の大きな特徴。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

  • 幹。
    多数の根が絡み合ってできたもの。
    ヒカゲヘゴと異なり、 丸い葉跡は見えない。
    写真 / 2023.10 鹿児島県屋久島 S.Ikeda

特徴

ヤシの木のように育つ大きなシダ。 琉球に多いヒカゲヘゴとよく間違われますが、 ヒカゲヘゴほど高く育たず、 枯れた葉が垂れて長く残ること、 葉柄にトゲが多いことなどが本種の特徴です。 本州や四国にもわずかに見られますが、 木のように高く育つことはまれです。
 
大きさ : 高さ2~6m、 葉の長さ100~200cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 低山の明るい林縁など
分布 : 本州(八丈島・伊豆半島・紀伊半島)、 四国、 九州、 琉球、 小笠原、 台湾、 中国、 南アジア、 インドシナ半島

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。

ヘゴ科のシダ

ヤシの木のようなものを多く含む熱帯のシダのグループ。 日本ではヘゴのほかに、 琉球にヒカゲヘゴ(モリヘゴ)クロヘゴ(オニヘゴ)、 小笠原にマルハチやメヘゴなどが分布します。 クサマルハチチャボヘゴのように高く育たない種類もあります。
 
見た目は木ですが、 幹は不定根が集まってできたもので、 年輪をつくる成長(肥大成長)をしません。 このことから木ではなく「木生シダ」として分けられています。 また、 太古から生えているイメージが強いですが、 実際に繁栄し始めたのは恐竜が絶滅する前の白亜紀くらいで、 比較的新しいグループのシダだったりします。

名前に関する注意点

ヘゴ科のシダはとても目立ち、 南国らしい雰囲気をもっているため、 一般的にも広く知られるようになりました。 ですがその知名度の高さから、 インターネット上などではヘゴの名前をめぐって誤解を招きやすい表現が見られることがあります。 よくある例を紹介します。
 
1.ヘゴ科全体の総称としてしまう
ヘゴはれっきとした植物名(和名)で、 分類学的に一つの種類を指しています。 「ヘゴ科全体の呼び名」として使われていることがありますが、 全体を表すときは「ヘゴ科」と呼ぶのが正確です。 ちなみに桫欏(ヘゴ)という言葉自体は、 昔の九州の方言でシダの仲間を広く指していたといわれています。 そのためイワヘゴやタニヘゴなど、 ヘゴ科とは分類が大きく異なるシダにもヘゴとつけられていることがあります。
 
2.ヘゴとシダを別々にしてしまう
ヘゴはシダ植物(維管束を持ち、 胞子で増える陸上植物)の一種であり、 ヘゴかシダかという分け方はできません。 これは山菜で有名なゼンマイワラビでも同じです。
 
3.ヘゴシダとも呼ばれている
この名前は正式な和名ではなく、 ヘゴ科の木生シダをまとめて呼ぶときに使われている俗称です。
 
4.ヒカゲヘゴをヘゴと間違えてしまう
インターネットでヘゴと検索すると、 ヒカゲヘゴの写真が多くヒットしてしまいます。 実際に沖縄などでよく目につき、 園芸でも広く知られているのはこのヒカゲヘゴの方であり、 そのためよく混同されています。 幹に枯葉があまり残らず、 拳サイズの丸い葉跡が黄色っぽい幹に多くあったら、 ヒカゲヘゴの可能性が高いです。 本来のヘゴは葉柄に鋭いトゲがあり、 園芸ではあまり出回っていません。

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