植物の名前には日本語で使われる和名とは別に、 世界共通で使われるラテン語の学名があります。 オオシケシダの学名はDeparia bonincolaで、 このうち Deparia(デパリア) が属の名前、 bonincolaが種類を区別する種小名です。 つまりこれと同属に含まれる植物はいずれもDepariaがつき、 例えばシケシダはDeparia japonica、 ナチシケシダはDeparia peterseniiが学名になります。
しかしこのDeparia、 日本ではオオシケシダ属とよく呼ばれています。 シケシダの方が日本全体で見れば身近なのに、 なぜ小笠原固有のオオシケシダが属名になっているのでしょうか?
その理由はシケシダ類の命名時までさかのぼります。 そもそもDepariaはシケシダのためにつけられた属名ではなく、 1829年ごろにハワイ産のシダをもとに設けられた古い属名です。 そのDepariaの基準種に近い特徴を持つものとして、 日本産種ではオオシケシダが含まれていたため、 Depariaをオオシケシダ属と呼ぶようになったと考えられます。 一方でシケシダなどは、 1964年に設立されたAthyriopsisなど別の属に分類され、 日本ではこのAthyriopsisが最初にシケシダ属と呼ばれました(それ以前はチャセンシダ属Aspleniumやノコギリシダ属Diplaziumなどとされていた)。
ところが1977年に日本産シケシダ類が分類学的に再検討され、 複数の属が一つにまとめられました。 植物の学名には、 原則として先に正式発表された名前が優先される「命名の優先権」というルールがあるため、 統合後の属名にはより古いDepariaが採用されました。
このような分類史を反映して、 日本では統合後もDeparia全体をオオシケシダ属と呼ぶ慣習が残ったと考えられます。 一方、 学名と違って日本語の和名には絶対的な優先権の決まりがないため、 近年ではDepariaをシケシダ属と呼ぶことも多くなっています。
オオシケシダ
小笠原のでっかい立ち上がるシケシダ
特徴
湿気たところを好むメシダ科のシダで、 小笠原諸島の固有種です。 本土で身近なシケシダよりも倍くらい大きくなり、 羽片が多く、 太く立つ根茎から葉をまとまって出します。 葉裏につく胞子のう群はシケシダと同じく楕円形ですが、 包膜のフチに突起が無いです。
葉の長さ : 60~130cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 山地の空中湿度のある林床
分布 : 小笠原(父島・母島・火山列島)
※正確な種の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。
