ノキシノブは市街地のケヤキやサクラなど街路樹の幹にもよく生えている、 とても身近なシダです。 その姿から「木に寄生している」と思われがちですが、 実際には幹を住みかにしているだけで、 木から栄養を奪っているわけではありません。
幹に根を張れば、 土が乏しくてあまり大きくなれないものの、 光を独占しやすいという利点があります。 ただし、 幹は雨や風に強くさらされるため、 そこで生き抜くには丈夫でなければなりません。 ノキシノブはその厳しい環境に耐える力を持っており、 その強さが「シノブ(耐え忍ぶ)」という名前の由来になっています。
これに関連して、 葉裏の大きな丸い斑点を「寄生虫がたくさん付いている」と勘違いする人もいますが、 これは胞子をつくる「胞子のう」が集まったもの。 子孫を残すための大切な器官なので、 気味悪がらなくて大丈夫です。
ノキシノブ
街路樹にも生える身近なシダの1つ
特徴
木の幹などに生える細長い葉のシダ。 シダなので花が咲かず、 葉裏に大きな丸い胞子のう群を2列につけます。 名前のノキは、 かつて軒先(屋根の突き出た部分)によく生えていたことに由来します。 しかし木造家屋が少なくなった現代では、 軒先で中々見られなくなってしまいました。
葉の長さ : 8~20cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 樹幹や石垣
分布 : 北海道(渡島半島など)、 本州、 四国、 九州、 琉球、 朝鮮、 台湾、 中国、 南アジア、 インドシナ半島、 フィリピン、 ハワイ
※正確な種の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。
