ノキシノブ

街路樹にも生えるとても身近なシダ

  • 街路樹の幹にも生える身近なシダ。
    別名ヤツメラン。
    写真 / 2022.10 千葉県 S.Ikeda

  • 根茎をやや短くはって葉を出す。
    写真 / 2022.10 千葉県 S.Ikeda

  • 葉裏。
    2列に胞子のう群をつける。
    別名の由来になっている。
    写真 / 2022.10 千葉県 S.Ikeda

  • 若い胞子のう群。
    小さめで、 表面に円形の鱗片がたくさんつく。
    写真 / 2022.10 千葉県 S.Ikeda

  • 葉柄基部。
    境がはっきりしない。
    黄緑色だが、 時に黒っぽくなる。
    写真 / 2022.10 千葉県 S.Ikeda

特徴

木の幹などに生えるウラボシ科のシダ。 根茎から細長い葉をたくさん出します。 シダなので花が咲かず、 葉裏に大きな丸い胞子のう群を2列につけます。
名前のノキは、 かつて軒先(屋根の突き出た部分)によく生えていたことに由来します。 しかし木造家屋が少なくなった現代では、 軒先で中々見られなくなりました。
 
葉の長さ : 8~20cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 樹幹や石垣
分布 : 北海道(渡島半島など)、 本州、 四国、 九州、 琉球、 朝鮮、 台湾、 中国、 南アジア、 インドシナ半島、 フィリピン、 ハワイ

※正確な種(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。

木に害はない!

ノキシノブは市街地のケヤキやサクラなど街路樹の幹にもよく生えている、 とても身近なシダです。 その姿から「木に寄生している」と思われがちですが、 実際には幹を住みかにしているだけで、 栄養を奪っているわけではありません。
 
幹に根を張れば、 土が乏しくてあまり大きくなれないものの、 光を独占しやすいという利点があります。 ただし、 雨や風、 大気に強くさらされるため、 そこで生き抜くには丈夫でなければなりません。 ノキシノブは厳しい環境に耐える力を持っており、 その強さがシノブ(耐え忍ぶ)という名前の由来になっています。
 
これに関連して、 葉裏の大きな丸い斑点が「寄生虫がたくさんついている」とも勘違いされがちですが、 これは胞子をつくる「胞子のう」が集まったもの。 子孫を残すための大切な器官なので、 気味悪がらなくて大丈夫です。

いくつかの種類に分かれた!

ノキシノブは日本各地に広く分布し、 場所によって見た目に違いがあることが以前から知られていました。 そして近年、 遺伝子などを詳しく調べる研究が進み、 これまでまとめてノキシノブとされてきたものの中にいくつかの違う種類が含まれていることが明らかにされました。
 
2018年の研究では、 狭い意味でのノキシノブが残りつつ、 フジノキシノブとクロノキシノブが新種として分かれました。 2025年にはさらに、 タジマノキシノブが新種として発表されました。 以下が主な特徴です。 ※()の中は、 世界の研究者が共通して使う学名です。
 
●ノキシノブ(Lepisorus thunbergianus) : このページで紹介している種類。 いくつかの種類に分けられた現在でも、 身近な場所で一番見つけやすいノキシノブ類。
●フジノキシノブ(Lepisorus kuratae) : ノキシノブによく似ていて、 見分けるのが難しい。 葉はやわらかくて幅広めで、 根茎先から多くの葉を出す。 ノキシノブとツクシノキシノブの交雑から生まれたと考えられている。 名前のフジは富士山にちなむ。
●クロノキシノブ(Lepisorus nigripes) : 葉は細長く濃緑色で、 名前の通り葉柄がふつう黒っぽいので割と見分けやすい。 長くはう根茎から間をあけて葉が出る。 ノキシノブとナガオノキシノブの交雑から生まれたと考えられている。
●タジマノキシノブ(Lepisorus tajimaensis) : これまでのところ若狭湾周辺の地域だけで見つかっている。 葉はやや幅広く、 根茎から間をあけて葉が出る。 さらに胞子のう群が葉のフチ寄りにつき、 葉裏全体に小さなウロコ状の鱗片が散らばり、 葉のフチがときどき切れ込むなど色々個性的。 クロノキシノブとウロコノキシノブの交雑から生まれたと考えられている。 名前のタジマは兵庫県の但馬地域にちなむ。
 
この仲間が面白いのは、 ただいくつかの種類に分けられたというだけではなく、 種類の違うシダ同士が交雑して新しい種類が生まれてきたと考えられているところにあります。 シダ植物がどのように進化してきたのかを知る手掛かりとなっているわけです。
 
なお見た目が違うといっても、 下の写真を見てもらえればわかるように、 どれもかなりのそっくりさんです。 しかも雑種がよく見つかり、 基本的に顕微鏡がないと区別は難しいです。 よって無理に種類を決めず、 ノキシノブの仲間として観察し終えてしまっても十分です。

  • 広義ノキシノブから分けられた4種。
    どれもよく似ている。
    写真 / ノキ : 神奈川県、 フジ : 静岡県、 クロ : 東京都、 タジマ : 福井県 S.Ikeda

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