カツモウイノデは葉柄基部にびっしり毛がついているように見えますが、 正しくは毛じゃなくて鱗片です。
主に新芽を保護するために覆っている構造物の中で、 鱗片(りんぺん)は幅2細胞以上のもの、 毛(け)は幅1細胞のものを指します。 「褐毛」をじっくり観察してみると…幅が少しあるので鱗片だとわかります。
カツモウイノデ
褐毛のような茶色鱗片がカッコいいシダ
特徴
熱帯性の大きなシダ。 葉は三角形状のことが多く、 くすんだ緑色をしています。 葉柄基部には茶色の鱗片をびっしりつけ、 これが"褐毛"に例えられました。 軸部分にも鱗片が圧着してつくので、 その部分がくすんだ茶色っぽく見えます。 南日本でごく普通に見られますが、 本州では千葉県にまで生え、 同じオシダ科のイノデとは別のグループのシダです。
葉の長さ : 60~130cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 低山の林内
分布 : 本州(千葉以西の太平洋側・島根)、 四国、 九州、 琉球、 台湾、 中国南部、 インドなど
本当は毛じゃなくて…「鱗片」
タカワラビとよく間違われる
カツモウイノデとともに琉球以南には、 タカワラビ科のタカワラビというシダが分布しています。 いずれも園芸植物として割とメジャーで、 金色が幸運を呼ぶとかの名目で高値でよく売られています。 ちなみに…沖縄に行けばどちらも普通に見られます。
タカワラビは葉柄基部に金色っぽい毛をたくさんつけ、 この特徴から園芸ではキンモウコウ(中国名の金毛狗蕨が由来)と呼ばれています。 それゆえかカツモウイノデとよく混同されていて、 カツモウイノデがタカワラビの名で園芸ショップで売られてしまっていたり、 個人のSNSで紹介されてしまっていることがとても多くなっています。 ですが、 両種は分類からまず大きく異なるので、 シダに慣れている人であれば一瞬で区別できます。 特にわかりやすいポイントは以下です。
●タカワラビは①羽片など全体的にシャープに尖り、 ②葉裏が白っぽく、 ③軸部分は茶色の圧着する鱗片がつかないためツルツルで、 ⑤葉柄基部につくのは毛なのでウールっぽく、 ⑥新芽には開出した毛が全体に多くつきます。 ⑦最下羽片の軸に接する下向き小羽片2本が、 カツモウイノデのように顕著に長くなりません(詳しくは上のスライド7枚目)。
