ヒメミズワラビ

稲刈りの後にたくさん出てくるよ!

  • 秋の田んぼによく見られる。
    池や沼に生えることもある。
    写真 / 2021.9 新潟県 S.Ikeda

  • 細いのが胞子を飛ばす胞子葉。
    広いのが光合成のみする栄養葉。
    写真 / 2021.9 新潟県 S.Ikeda

  • 短い根茎から葉を出す。
    稲刈り後の空間を素早く占拠する。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 鹿の角みたいな胞子葉。
    大きく立ち上げる。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 胞子葉の裏面。
    葉のフチが反転して胞子のうを包む。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 丸みがあってかわいい栄養葉。
    あまり立ち上がらない。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 栄養葉の裏面。
    無毛でこれといった特徴はない。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 葉柄基部。
    わずかに茶色の鱗片をつける。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 出たばかりの子ども。
    この時点でもう胞子葉を出す。
    水田の株は池より小さいことが多い。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 農薬に弱いので、 ヒメミズワラビが生えている水田は減農薬または無農薬の証。 ヒレタゴボウなど様々な湿地の草もよく一緒に見られる。
    写真 / 2022.10 千葉県 S.Ikeda

特徴

稲刈り後の田んぼで見ることが多い水生シダ。 葉は黄緑色でみずみずしく、 やわらかいです。 鹿の角のような葉から胞子を飛ばします。 ワラビとは別のグループのシダですが、 食用にされることもあるのだとか。
 
葉の長さ : 10~40cm
観察の時期 : 主に秋(日本では一年草)
生える場所 : 水田や池沼
分布 : 本州(山形–宮城以南)、 四国、 九州、 琉球(沖縄島以北)、 アジアの亜熱帯や熱帯広域?

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。 ​

水生シダ

田んぼや池など水辺にのみ生えるシダ植物のこと。 水中から生えるミズニラやデンジソウ、 水面に葉を浮かばせるサンショウモやアカウキクサなどが含まれます。 厳密にはサンショウモ目のことを指し、 この場合はミズニラやヒメミズワラビを含みません。
 
かつて日本中でごく普通に見られたといわれています。 ところが、 開発によってたくさんの生育地が消滅し、 除草剤や田んぼの水抜き(乾田化)にめっぽう弱く、 アメリカザリガニなどの外来種に食べられ激減しました。 そのほとんどは2020年の環境省のレッドリストに記載されています。 ごく一部の例外であるヒメミズワラビは指定こそされていませんが、 各地で大きく数を減らしています。
 
その一方で、 近年ではとある水生シダの外来種も問題になっています。

  • 代表的な水生シダと2020年環境省レッドリスト。
    そのほとんどが指定されていて、 かなり危機的。
    そして、 どれもこれもシダっぽくない。
    写真 / いずれもS.Ikeda

隠蔽種(いんぺいしゅ)

見た目がそっくりでこれまでは同種とされていたものが、 遺伝子の違いによって別種に分けられたものを隠蔽種(いんぺいしゅ)といいます。
 
シダ植物ではヒメミズワラビとミズワラビが有名な隠蔽種の例です。 以前は全てミズワラビとされてきた日本産種は遺伝解析によって、 琉球に分布するものが「ミズワラビ」に、 日本本土と琉球の一部に広く分布するものが「ヒメミズワラビ」に分けられました。
 
このほかにもシダ植物の隠蔽種は多くあるといわれており、 分類をより難しくしています。

見られる散歩道