デンジソウ

滅多に見られない、 水田のクローバー

  • 田んぼや湿地に生える。
    ただ、 今では幻の存在となってしまった。
    写真 / 2024.10 福井県 S.Ikeda

  • 根茎を長くはって葉を出す。
    これは葉を立ち上げるタイプ(陸生形)。
    写真 / 2024.10 福井県 S.Ikeda

  • 水面に葉を浮かべるタイプ(浮葉形)。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 四葉のクローバーにそっくり。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 田の字というのは…こういうこと!
    田んぼに生える点でも似合った名前。
    写真 / 2023.10 千葉県 S.Ikeda

  • 胞子のう果。
    ふつう葉柄基部の少し上から出る。
    ナンゴクデンジソウは基部につける。
    写真 / 2024.10 福井県 S.Ikeda

  • 根茎。
    地中を長くはう。
    写真 / 2023.10 埼玉県 S.Ikeda

  • 夜になると葉を閉じる。
    朝になるとまた開く。
    写真 / 2023.10 埼玉県 S.Ikeda

  • デンジソウのイラスト。
    葉柄基部の少し上に胞子のう果をつけるのが特徴。 つけてないことも多い。
    写真 / S.Ikeda

特徴

田んぼなどに生える水生シダ。 四葉のクローバーのような見た目をしています。 シダなので花は咲かず、 葉柄に胞子のう果をつけます。 名前は葉の形が田の字に似ていることが由来です。
 
葉幅 : 2~5cm
観察の時期 : 春~秋(夏緑性)
生える場所 : 田んぼや湿地
分布 : 北海道、 本州、 四国、 九州、 朝鮮、 中国、 ベトナム、 ヨーロッパ

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。 ​

出会えたらとっても幸運!

かつてデンジソウは日本中の田んぼで見られたといわれていますが、 農薬や埋め立てなどによって大きく数を減らしました。 もはや幻の存在となりつつあり、 2020年の環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。 見つけたら四葉のクローバーのように幸運が訪れるかもしれませんね。
 
今ではありえませんが、 たくさん見られた時代には「水田害草」の1つとして扱われていました。 ただ、 その意味自体は間違ってなくて、 デンジソウの生えている水田では、 栄養の奪い合いによってイネの収量が減ってしまうのだとか。

デンジソウ科のシダ

シダとは思えないクローバーな見た目をしているグループ。 日本ではデンジソウと九州以南に分布するナンゴクデンジソウの2種だけ見られますが、 国外では60を超える種類が知られています。
 
水中でも育つのでアクアリウムでは「ウォータークローバー」と呼ばれて親しまれています。 例えばオーストラリアに分布するムチカという種類は葉に白斑があってシロツメクサの四葉にそっくりでよく販売されています。 また、 国外では食用にもされます。
 
日本に分布する2種はよく似ていて、 葉だけで見分けるのはほぼ不可能です。 はっきりとした違いは胞子のう果の位置。 デンジソウは葉柄基部の少し上につけますが、 ナンゴクデンジソウは葉柄基部につけます。 ただデンジソウでもまれに葉柄基部につけていることがあるので、 複数の胞子のう果を確認することがよいとされます。
 
園芸種として流通しているナンゴクデンジソウが関東など本来生えてない地域で野生化してきているといわれています。 在来種だと思って胞子のう果を見たら外来種だった!という事例が今後増えるのかもしれません。

  • 2種のイラスト比較。
    ナンゴクの方が小さめで葉のフチが波状になることが多いが、 一番の違いは胞子のう果のつける位置。 冬に葉を枯らすことも違い。
    写真 / S.Ikeda