かつてデンジソウは日本中の田んぼで見られたといわれていますが、 農薬や埋め立てなどによって大きく数を減らしました。 もはや幻の存在となりつつあり、 2020年の環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。 見つけたら四葉のクローバーのように幸運が訪れるかもしれませんね。
今ではありえませんが、 たくさん見られた時代には「水田害草」の1つとして扱われていました。 ただ、 その意味自体は間違ってなくて、 デンジソウの生えている水田では、 栄養の奪い合いによってイネの収量が減ってしまうのだとか。
デンジソウ
滅多に見られない、 水田のクローバー
特徴
田んぼなどに生える水生シダ。 四葉のクローバーのような見た目をしています。 シダなので花は咲かず、 葉柄に胞子のう果をつけます。 名前は葉の形が田の字に似ていることが由来です。
葉幅 : 2~5cm
観察の時期 : 春~秋(夏緑性)
生える場所 : 田んぼや湿地
分布 : 北海道、 本州、 四国、 九州、 朝鮮、 中国、 ベトナム、 ヨーロッパ
※正確な種の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。
出会えたらとっても幸運!
デンジソウ科のシダ
シダとは思えないクローバーな見た目をしているグループ。 日本ではデンジソウと九州以南に分布するナンゴクデンジソウの2種だけ見られますが、 国外では60を超える種類が知られています。
水中でも育つのでアクアリウムでは「ウォータークローバー」と呼ばれて親しまれています。 例えばオーストラリアに分布するムチカという種類は葉に白斑があってシロツメクサの四葉にそっくりでよく販売されています。 また、 国外では食用にもされます。
日本に分布する2種はよく似ていて、 葉だけで見分けるのはほぼ不可能です。 はっきりとした違いは胞子のう果の位置。 デンジソウは葉柄基部の少し上につけますが、 ナンゴクデンジソウは葉柄基部につけます。 ただデンジソウでもまれに葉柄基部につけていることがあるので、 複数の胞子のう果を確認することがよいとされます。
園芸種として流通しているナンゴクデンジソウが関東など本来生えてない地域で野生化してきているといわれています。 在来種だと思って胞子のう果を見たら外来種だった!という事例が今後増えるのかもしれません。