本種は、 シケチシダとイッポンワラビの中間的な外見をしていて、 特に西日本に分布するものの多くは、 無融合生殖(詳しくはこちら)によって胞子で繁殖することが知られています。 このことから、 かつて両種の交雑起源で誕生したと考えられていて、 近年の文献では独立種として扱われることが多くなっています。
一方で東日本では、 胞子の発達が不十分で正常に発芽できない、 単純な雑種が多いことが明らかとなっています。 上のスライド写真に示されたものも、 胞子観察の結果、 この雑種に当たると推定されました。

ハコネシケチシダ
シケチとイッポンの中間なシダ
特徴
神奈川県の箱根に由来する、 やわらかくてみずみずしいシダ。 シケチシダとは、 表の葉軸上に肉質の突起がある、 胞子のう群に包膜がないなど共通の特徴をいくつかもっています。 本種の葉幅はより広く、 小羽片は切れ込みが深めで先がやや尖り気味です。 胞子のう群は楕円形が多く、 円形も混じります。
葉の長さ : 40~80cm
観察の時期 : 春~秋(夏緑性)
生える場所 : 山地の湿った林内や林縁
分布 : 本州、 四国、 九州、 済州島、 中国
※正確な種の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。