本種はベニシダと外見がとてもよく似ていますが、 その成り立ちを知っておくと両種の違いがわかりやすくなります。
近年の研究でベニシダは、 大昔にハチジョウベニシダとマルバベニシダが交雑して生まれたと考えられています。 マルバベニシダは、 ベニシダよりも葉が厚くパリパリとした質感で、 小羽片に丸みがあるのが特徴です。 つまりハチジョウベニシダは、 ベニシダからこの特徴を抜いたものだと意識しておくと見当をつけやすいです。 ただし、 この両種は外見がほぼ同じのことがあり、 これだけですべての個体を見分けるのは困難だともいわれています。
では、 どうすればしっかり見分けられるのかというと、 「胞子のう1個にできる胞子の数」を調べる必要があります。 ハチジョウベニシダは胞子を64個、 ベニシダは32個つくります。 ですが、 この胞子のうはとても小さく、 調べるには生物顕微鏡や専用のガラス板(プレパラート)など、 特別な道具が必要です。
この地道な胞子観察の積み重ねにより、 近年日本各地でハチジョウベニシダの自生地が新たに見つかっています。 もし学校や職場などで顕微鏡を使えるチャンスがあるなら、 ぜひ観察にチャレンジして、 誰も知らない自生地を発見してみてはいかがでしょうか。
ハチジョウベニシダ
受精して殖えるヒョロヒョロなベニシダ
見分けるには顕微鏡が必要
シダの有性生殖と無融合生殖
上の通り2種間でつくる胞子数が違うことを紹介しましたが、 これはハチジョウベニシダが「有性生殖」、 ベニシダが「無融合生殖」という異なる繁殖方法をとっているためです。 日本に生えているシダのおよそ15%が無融合生殖種であることがわかっています。 以下は、 その2つの繁殖方法の簡単な説明です。
●有性生殖(ゆうせいせいしょく)は、 受精をする繁殖方法のこと。 胞子のう内で減数分裂が起こり、 親株の細胞より染色体数が半分の胞子が、 1胞子のうあたりふつう64個つくられます。 胞子が発芽すると前葉体になり、 そこでつくられた卵と精子が融合して染色体数が戻ります。 これが成長して、 一般的なシダの姿(胞子体)になります。
●無融合生殖(むゆうごうせいしょく)は、 受精をしない繁殖方法の一つ。 減数分裂の進み方や胞子母細胞数といった胞子形成の過程が有性生殖と異なり、 親株と同じ染色体数をもつ胞子が、 1胞子のうあたりふつう32個つくられます。 胞子から発芽した前葉体は、 卵と精子の融合を経ずに、 そのまま胞子体へ成長することができます。
