コケスギラン

コケでもスギでもランでもない!

  • 高山の開けた草地に生え、 蛇紋岩地を好む。
    写真 / 2025.9 長野県 S.Ikeda

  • 日当たりが良いと紅葉する。
    写真 / 2025.9 長野県 S.Ikeda

  • 短い匍匐茎を分枝させて直立茎を出す。
    手の小指より細く、 ひょろひょろしている。
    写真 / 2025.9 長野県 S.Ikeda

  • 直立茎。
    分枝せず、 膨らんだ部分に胞子のうを多くつける。
    写真 / 2025.9 長野県 S.Ikeda

  • 上部に小胞子のう、 下部に大胞子のうをつける。
    熟すと2つに割れて胞子を飛ばす。
    胞子葉のフチに長く尖った鋸歯がある。
    写真 / 2025.9 長野県 S.Ikeda

  • 栄養葉。
    茎にらせん状に多数つく。
    胞子葉より小さく、 フチに小さな鋸歯が少しある。
    似たコスギランヒメスギランは鋸歯がない。
    写真 / 2025.9 長野県 S.Ikeda

  • エゾノヒメクラマゴケと混生。
    濃緑色で立ち上がっているものがコケスギラン。
    どちらも氷期に、 胞子の化石が多産する。
    写真 / 2025.9 長野県 S.Ikeda

特徴

北半球の寒い地域に広く分布するシダ植物で、 日本では高山でまれに見られます。 明るい草地の中から細い茎を立ち上げ、 丸い胞子のうを多くつけます。 その外見はヒカゲノカズラっぽさがありますが、 大小2種類の胞子をつくるなどの特徴から、 イワヒバに近縁とされます。
 
茎の高さ : 3~12cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 亜高山帯のアルカリ性寄りの草地
分布 : 北海道、 本州(中部以北)、 ロシア、 ヨーロッパ、 北米

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。

意外な分野で活躍

コケスギランは日本での分布が少ないマイナーな植物。 多くの人にとって、 一生その名前を耳にしないまま過ごす存在かもしれません。 しかし、 じつはある分野で重宝されています。
 
それは考古学。 現在の日本におけるコケスギランの分布は、 標高およそ1800~2400mの亜高山帯に限られています。 ところが、 より低い地点にある、 1万年以上前の最終氷期の多くの地層からコケスギランの化石が見つかっています。 これにより、 当時の気候が今より涼しかったことや、 明るい草地が多数広がっていたことがわかります。
 
ちなみに化石としてよく出土するのは、 上写真のような植物体そのものではなく、 直径0.5mmほどの大胞子や、 0.03mmほどの小胞子です。

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