コケスギランは日本での分布が少ないマイナーな植物。 多くの人にとって、 一生その名前を耳にしないまま過ごす存在かもしれません。 しかし、 じつはある分野で重宝されています。
それは考古学。 現在の日本におけるコケスギランの分布は、 標高およそ1800~2400mの亜高山帯に限られています。 ところが、 より低い地点にある、 1万年以上前の最終氷期の多くの地層からコケスギランの化石が見つかっています。 これにより、 当時の気候が今より涼しかったことや、 明るい草地が多数広がっていたことがわかります。
ちなみに化石としてよく出土するのは、 上写真のような植物体そのものではなく、 直径0.5mmほどの大胞子や、 0.03mmほどの小胞子です。
コケスギラン
コケでもスギでもランでもない!
特徴
北半球の寒い地域に広く分布するシダ植物で、 日本では高山でまれに見られます。 明るい草地の中から細い茎を立ち上げ、 丸い胞子のうを多くつけます。 その外見はヒカゲノカズラっぽさがありますが、 大小2種類の胞子をつくるなどの特徴から、 イワヒバに近縁とされます。
茎の高さ : 3~12cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 亜高山帯のアルカリ性寄りの草地
分布 : 北海道、 本州(中部以北)、 ロシア、 ヨーロッパ、 北米
※正確な種の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。
