本種を含むコケシノブ科コケシノブ属のシダは、 岩や幹にたくさんの葉で覆うようにして群生します。 成長が遅く、 小さくてコケのようですが、 維管束をもつれっきとしたシダ。 湿った場所を好み、 透き通った葉が美しく、 テラリウムなどでの栽培も人気になりつつあります。 なお、 より園芸シダで有名なシノブ科のシノブとは、 分類的に大きく異なっています。
一般的に共通する特徴として、 葉はツヤがあり、 包膜が二枚貝状の形をしています。 また根茎は針金状で細く、 そこにつく毛が抜け落ちやすいです。 日本の本州には、 例えば以下のような種類が分布しています。 ※()内は学名
●コウヤコケシノブ(Hymenophyllum barbatum) : 本属ではもっとも身近に見られる。 葉形は丸っこく、 羽片フチや包膜にギザギザ状の鋸歯があるのがわかりやすい特徴。 葉裏の葉軸上に毛が多い。
●キヨスミコケシノブ(Hymenophyllum oligosorum) : コウヤコケシノブに似ているがずっと個体数が少なく、 主に樹幹に見られ、 岩場にはめったに生えない。 鋸歯は包膜のみで、 葉裏の葉軸上に毛が多い。
●ホソバコケシノブ(Hymenophyllum polyanthos) : 暖かい地域の低山に多い。 本属中では大型で10 cmを超えることが多い。 鋸歯がなくて葉裏の葉軸上は無毛。
●ヒメコケシノブ(Hymenophyllum coreanum) : ホソバコケシノブに似ているがより高標高に多い。 葉は小さくてふつう5 cm以下。 葉先に胞子のう群が集まるのが大きな特徴。 鋸歯がなくて葉裏の葉軸上は無毛。
●コケシノブ(Hymenophyllum wrightii) : 本ページで紹介している種類で、 涼しい山地を好む。 葉軸に対する羽片のつく角度か狭く、 ふつう30~45度(他種は約45~70度)。 鋸歯がなくて葉裏の葉軸上は無毛。
なおコケシノブという名前は紛らわしいことに総称として使われることがあり、 上記のコウヤコケシノブなどがコケシノブとして紹介されてしまうこともあります。 しかしコケシノブは1つの種類を指すれっきとした植物名(標準和名)です。 間違えないように注意!
コケシノブ
二枚貝をつけるコケみたいなシダ
特徴
涼しい山地で幹などに群生するコケシノブ科のシダ。 葉は小さくて平たくツヤがあり、 数回枝分かれした羽片は、 30~45度くらいの急な角度で葉軸につきます。 羽片フチにギザギザ状の鋸歯がなく、 二枚貝状の包膜に覆われた胞子のう群を羽片先につけます。 根茎は毛がほとんどなくて針金のように細いです。
葉の長さ : 3~7cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 山地の樹幹や岩場
分布 : 北海道、 本州、 四国、 九州、 朝鮮、 極東ロシア、 北米北部
