21世紀の森と広場

フジノキシノブ

2018年に新種に分けられたノキシノブ

  • 低山に生え、 都市公園でも見られる。
    根茎を短くはって葉を密に出す。
    写真 / S.Ikeda

  • よく群生して生える。
    これは自殖(じしょく)という繁殖方法による。
    木に寄生しているわけではない。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉裏。
    大きな丸い胞子のう群を2列につける。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉裏。
    若い胞子のう群は円形の鱗片に覆われる。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉裏。
    脈近くに小さな鱗片が多くつく。
    これの形状がノキシノブとの区別点となる。
    写真 / S.Ikeda

  • 基部。
    葉柄は不明瞭。
    根茎から密に葉を出す。 根茎には鱗片が多い。
    写真 / S.Ikeda

  • 1つの根茎つき標本。
    短い根茎に葉をすき間なくつけ、 扇形に広げる。
    ツヤはあまりなく、 葉幅が広め。
    写真 / S.Ikeda

  • 根茎の鱗片。
    基部で幅広く、 フチに不規則な突起がある。
    ノキシノブよりも全体が小さめの傾向がある。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉身下部の鱗片。
    フチの突起はノキシノブよりも目立つ傾向がある。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉身上部の鱗片。
    フチの突起はノキシノブよりも顕著。
    比較におすすめの鱗片。
    写真 / S.Ikeda

  • 胞子のう群を覆う円形の鱗片。
    フチは波状。
    写真 / S.Ikeda

  • 1つの胞子のうを壊したもの。
    胞子の大きさや形は正常。
    大小不揃いでいびつな場合は雑種となる。
    写真 / S.Ikeda

特徴

木の幹などから葉を垂らすノキシノブの仲間のシダ。 ノキシノブによく似ていて、 本種の方が根茎から密に葉を出し、 葉がやわらかめで葉幅が広くなりますが、 特に小さな株の野外での区別は難しいです。 関東から東海にかけて多く分布するといわれています。
 
葉の長さ : 9~20cm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 低山の石垣や樹幹など
分布 : 本州、 四国

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。 ​

2018年に新種記載!

本種は遠い昔にノキシノブとツクシノキシノブの雑種起源で生まれたと考えられています。
かつてノキシノブに含められていましたが、 遺伝子を用いた分類の結果、 2018年にクロノキシノブとともに新種に分けられました。
 
人里でもよく見られるので、 これまでノキシノブと思っていたものがフジノキシノブだった!…なんてことがあるかも?

ノキシノブとの違い

基本的にノキシノブと見分けるには、 フジかな?と見当をつけてからルーペまたは顕微鏡で鱗片の観察が必要となります。 しかし、 それでもたくさんの標本を顕微鏡で観察して経験を積まないと難しく、 さらに雑種もあります。 従って、 研究者や植生調査の関係者でもない限りは、 わざわざ両種を区別せずにノキシノブ(広義)としちゃうのも1つの手です。
 
ノキシノブは、 フジよりも①根茎を長めにはって少し間隔をあけて葉を出します(ただし小さな株ではわかりにくい)。 ②葉はやや厚めでツヤのあることが多く、 葉幅がやや狭めです。 ③根茎の鱗片はより大きめで、 基部があまり広くならないことが多いです。 ④葉身上部の鱗片はフチの突起があまり目立ちません。

  • 根茎の鱗片の比較。
    フジはより小さくて、 基部が広くなる。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉身下部の鱗片の比較。
    フジは細胞が大きくてその数が少なく、 フチの突起が目立つが、 区別は難しい。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉身上部の鱗片の比較。
    フジはやや先が細く伸び、 細胞が大きくて数が少なく、 フチの突起が目立つ。
    ここの鱗片は必ず見るようにしよう。
    写真 / S.Ikeda

  • 胞子のう群を覆う円形の鱗片の比較。
    よく似ている。 この標本ではフジの方がフチ近くの細胞壁の色が薄い。
    写真 / S.Ikeda

執筆協力 : フジノキシノブを新種記載された藤原泰央先生に、 本ページに用いた写真や標本を直接ご確認いただきました。

21世紀の森と広場 基本情報