ニシノオオアカウキクサ

外来種なのかよくわからないアゾラ

  • 田んぼや池に生える。
    アカウキクサ属を意味するアゾラ(Azolla)の一種。
    写真 / 2026.7 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • 主に分裂で増殖する。
    勢いが良かったり陸地ではモコモコと出る。
    写真 / 2026.7 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • クレソン田で広く浮かぶ。
    夏場はふつう緑色。
    写真 / 2026.7 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • 冬が近づくと紅葉することが多い。
    写真 / 2024.11 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • 水中の長い根に根毛が多くつくが、 写真のように古い根ではほとんど抜けてしまっていることもある。 日本固有種のオオアカウキクサの根毛は早期に抜けるので、 これに酷似している。
    写真 / 2024.8 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • 水から上げると根毛はさらにわかりにくい。
    写真 / 2024.8 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • 植物体裏側。
    初夏頃だと丸いものがついていることがある。
    写真 / 2026.7 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • これは胞子のう果。
    茎裏側につき、 直径1.5mmほど。
    一般的にオオアカウキクサ類は胞子のう果をつけること自体まれだが、 本種はつけていることが多い。
    写真 / 2026.7 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • 田んぼを広く覆ってるもの。
    アゾラはラテン語で「乾燥で死ぬ」の意味がある。
    写真の群生は、 冬に水が抜かれ完全に消滅した。
    写真 / 2024.8 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • 富士山の湧水でモコモコと巨大化した株。
    オオアカウキクサと間違えそうだが、 葉が小さい、 葉の表面に目立つ突起が多い、 若い根に根毛が多数発達するなど、 外来アゾラの特徴を一通り確認できた。
    写真 / 2024.11 静岡県富士宮市 S.Ikeda

  • 全形。
    アメーバ状で、 葉は長さ1mmを下回ることが多い。
    アカウキクサは全形が三角形。
    オオアカウキクサは葉が2mm近くとより大きくなる。
    写真 / S.Ikeda

  • 裏面。
    茎から多数の根が伸びる。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉。
    表面のイボ状突起が目立つ。
    この突起の細胞の数に注目。
    写真 / S.Ikeda

  • 突起は全て1細胞の高さがあり、 2細胞はない。
    オオアカウキクサは突起があまり目立たず、 アメリカオオアカウキクサは多くが2細胞となり、 雑種アゾラのアイオオアカウキクサは1細胞に2細胞が混じるとされるが、 これだけで見分けるのは難しい。 少なくとも2細胞の突起が確認できれば外来種となる。
    写真 / S.Ikeda

  • 若い根。
    短い根毛がびっしりついている。
    写真 / S.Ikeda

  • マスラとグロキディウム。
    胞子のう果に入っている小胞子のうを覆う包膜を割ると、 中から4~6個ほどの球状体が出てくる。 これをマスラ(massula)という。 マスラの周りに生えているものは先が錨状に曲がった突起で、 グロキディウム(glochidium)と呼ばれている。
    詳しくはオオアカウキクサのスライドを参照。
    写真 / S.Ikeda

  • グロキディウム。
    中に隔壁(かくへき)がないのが本種の大きな特徴。
    オオアカウキクサは先端近くに3本以上ある。 アメリカオオアカウキクサは全体に2本以上つく。 雑種のアイオオアカウキクサはそもそも胞子のう果をほとんど作らず、 できた場合はオオアカウキクサに似て先端近くに多数つくという。
    写真 / S.Ikeda

特徴

田んぼなどで見られる水生シダ。 全体不規則なアメーバ状の形をしていて、 ウロコみたいな葉に覆われます。 冬が近づくと紅葉して、 水面を赤く染めてきれいです。 初夏頃、 たまに茎の下に胞子のう果をつけます。
日本固有種のオオアカウキクサによく似ていますが、 葉が1mm前後と小さく、 葉表面に長い1細胞の突起がたくさんあり、 グロキディウムに隔壁がふつうありません。 根には根毛が多数つきますが、 古い根だと抜け落ちてしまっていることも多いです。 ニシノは最初に西日本で発見されたことにちなみます。
 
大きさ : 幅1~4cm、 葉長0.6~1.1mm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 水田や池沼
分布 : 北米原産で世界各地に野生化?

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。

本当に外来種か

日本産の本種は、 かつてオオアカウキクサ大和型と呼ばれていましたが、 後にアメリカ大陸原産のニシノオオアカウキクサと同種であると考えられるようになりました。 以降、 本種は外来種のアカウキクサ属(外来アゾラ)とみなされ、 各地で大発生した際には駆除されるようになりました。
 
そもそもこの問題の発端は、 1990年代にさかのぼります。 日本ではこの時期から、 肥料やカモの餌として外来アゾラが農業利用されていました。 しかし、 各地で野生化して爆発的に増えてしまったのです(詳しくはこちら)。 その結果、 この農法に導入されたアメリカオオアカウキクサを中心とした外来種の存在が広く知られるようになりました。 一方、 ニシノオオアカウキクサがこの農法のために持ち込まれたのかは、 現時点ではっきりとわかっていません。 そのためか、 外来生物法で「特定外来生物」に指定されているアゾラは、 2024年現在でアメリカオオアカウキクサ(アゾラ・クリスタータ)のみであり、 ニシノオオアカウキクサは指定されていません。 アメリカとニシノの人工雑種であるアイオオアカウキクサも交雑しないため未指定となっています。
 
つまり一応、 栽培や運搬などの法規制の対象外となりますが、 外来種である可能性自体は高いとされます。 古い標本記録でも1980年代と新しめであり、 例えば輸入されたスイレン鉢に紛れ込んでいたなど、 農業利用以外で人に持ち込まれた可能性も考えられています。 事実、 ニシノオオアカウキクサの増殖力はとても大きく、 各地の生態系に影響を与えていることは確かであり、 在来アゾラのアカウキクサオオアカウキクサの生育を脅かしている可能性が高いです。 そのことから、 法的拘束力はないものの、 周知を目的として作られた環境省の生態系被害防止外来種リストでは、 外来アゾラ類が一括で最高ランクの緊急対策外来種に指定されています。 これは有名なアライグマ、 オオクチバス、 カミツキガメなどの特定外来生物と同ランクです。
 
とはいえ、 そもそも外来種とは「本来いなかった場所に、 人間によって持ち込まれた生き物」のことを指します。 池の水面がアゾラで真っ赤に染まっているとき、 在来種なら美しいと感じ、 外来種なら異様だと評価するのは、 人間の身勝手さが表れているともいえるでしょう。 ニシノオオアカウキクサは今でもネット通販などで売られている光景をよく目にしますが、 本当に環境のことを考えるのなら、 少なくとも人の手で分布を広げないという意識が求められてきそうです。
 
なお、 アカウキクサ属(アゾラ)の種類ごとの特徴については、 こちらにまとめています。

在来種との識別

日本固有種のオオアカウキクサはニシノオオアカウキクサとよく似ていて区別が難しいですが、 以下に着目するとDNA鑑定なしでも見分けることが一応可能です。 なおもう1つの在来種のアカウキクサとの識別は容易です。
 
オオアカウキクサは①葉が2mm近くと大きく、 ②葉表面の突起が短くてまばらで、 ③グロキディウム内部にある仕切り(隔壁)が先端近くに3本以上でき、 ④湧水地のような水温変化の少ない水辺に限って見られます。
アカウキクサは①植物体がきれいな正三角形状で、 ②茎にも突起がつきます。

  • グロキディウム内部の隔壁の比較。
    オオアカウキクサは先端近くに3本以上ある。
    ニシノオオアカウキクサはないことがほとんどで、 あっても先端近くに1か2本しかない。
    可能ならここまでは見ておきたい。
    写真 / S.Ikeda

Language Settings

Select display language

Select audio language

Notes:
Some walking routes may also offer voice guides in other languages.
If a voice guide is not available in your selected language, it will be provided in Japanese or English.