アカウキクサ

三角形がわかりやすい赤浮草なシダ

  • 田んぼや池で浮かんでいる。
    アカウキクサ属を意味するアゾラ(Azolla)の一種。
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • 水面を覆う。
    勢いが良かったり陸地ではモコモコと出る。
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • 水温が下がると、 日当たりが良い場所では紅葉する。
    とはいえ冬でも暖かい亜熱帯域に多いからか、 紅葉を見る機会が少なめ。
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • 水中の根。
    根毛がびっしりつき、 古くなっても抜けない。
    これは外来アゾラ(アイオオアカウキクサニシノオオアカウキクサ)も基本同じ。 オオアカウキクサは早期に抜ける。
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • いくつかの水草が混じっている。
    見分けられるかな?
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • イチョウウキゴケは維管束のないコケ植物。
    アカウキクサと外来アゾラは維管束をもつシダ植物。
    ナンゴクアオウキクサは花を咲かせる種子植物。
    いずれも全く別のグループ。
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • 次はアカウキクサと外来アゾラの違い。
    色ではなく全形に注目してみよう。 外来アゾラ(とオオアカウキクサ)は不規則なアメーバ状に枝分かれするが、 アカウキクサはきれいな三角形になるので、 簡単に見分けられる。
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • アカウキクサと外来アゾラ。
    混生していると在来種が競争に負けてしまう。
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • 外来アゾラの中に少数のアカウキクサ。
    1年後、 この自生地に筆者の友人が行ってくれたが、 外来アゾラに占拠され、 まさかの全滅だったという。
    写真 / 2024.4 沖縄県本島 S.Ikeda

  • 植物体。
    正三角形に近く、 わかりやすい。
    葉は1mmほど。
    写真 / S.Ikeda

  • 裏面。
    茎から多数の根が伸びる。
    写真 / S.Ikeda

  • 葉と茎。
    葉は長方形で、 茎に交互につく。
    写真 / S.Ikeda

  • さらに拡大。
    表面に注目!
    写真 / S.Ikeda

  • 葉には1細胞の突起があり、 水をはじく。
    さらに、 茎にも長い1細胞の突起がある。
    オオアカウキクサや外来アゾラには茎の突起がない。 乾燥標本など、 植物体の形状での区別が難しいときは、 ここがわかりやすい違いとなる。
    写真 / S.Ikeda

特徴

暖かい地域の水辺で見られる水生シダ。 植物体はきれいな三角形状で、 ウロコみたいな四角形の葉に覆われ、 水温が下がると赤くなります。 葉や茎には小さな突起が多く、 根には根毛がびっしりつきます。 シダなので花が咲かず、 秋頃に裏側に胞子のう果をつけます。
 
大きさ : 幅1~2cm、 葉長0.7~1.4mm
観察の時期 : 一年中(常緑性)
生える場所 : 水田や池沼
分布 : 本州(静岡以西)、 四国、 九州、 琉球、 朝鮮、 台湾、 中国、 南アジア、 東南アジア

※正確な(しゅ)の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。

アカウキクサ属(アゾラ)のシダ

シダとは思えない浮草なグループ。 アカウキクサ属はラテン語で「アゾラ(Azolla)」といい、 総称の意味ではこちらがよく使われます。 アゾラは共通して、 植物体がウロコ状の小さな葉で覆われて水をはじき、 水温が下がると日当たりが良い場所では赤くなります。 葉には空気中から窒素を取り込むことができるラン藻類が共生しており、 栄養の少ない環境でもよく育ちます。 繁殖は胞子でもできますが、 もっぱら植物体の分裂で行われ、 条件が良いとわずか1週間で2倍以上増えることも。
 
特に外来種のアゾラは丈夫で、 かつては農業利用されていましたが、 各地で野生化して爆発的に増えてしまいました(詳しくはこちら)。 その一方で、 元から日本にいる2種類のアゾラ、 アカウキクサとオオアカウキクサは、 外来種や除草剤、 乾田化の影響で大きく数を減らしました。 2012年の第4次環境省レッドリストから、 どちらも絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されています。 アゾラ自体は今も各地でよく目にしますが、 その99%が外来種といっても過言ではないくらい、 在来種を見ることができなくなっています。

日本で見られるアゾラ一覧

以下は各アゾラの簡単な解説。 アゾラはアカウキクサを除いて顕微鏡なしで見分けるのが難しく、 特に外来アゾラは厳密にはDNA鑑定まで必要だといわれています。 アゾラの中には、 法律で生きたままの運搬などが禁止されている特定外来生物も含まれるため、 駆除すべきかわからないときは無理せず専門家に相談するのがおすすめです。 ※()内は学名
 
在来アゾラ
アカウキクサ(Azolla pinnata subsp. asiatica) : 本ページの種類で絶滅危惧種。 植物体は三角形で、 葉のほか茎にも目立つ1細胞の突起があるのは本種のみ。 根には根毛が多い。 沖縄に本種と異なる系統が一部野生化しているといわれるが現状不明。
オオアカウキクサ(Azolla japonica) : 日本固有種かつ絶滅危惧種。 湧水の出る、 水温変化が少ない水辺に限って見られる。 植物体はアメーバ状で1~7cm、 葉は長さ1~2mmと他種よりも大きくなる。 葉の突起は1細胞であまり目立たず、 根につく根毛は早期に抜ける。
 
外来アゾラ
アメリカオオアカウキクサ(Azolla cristata) : アメリカ大陸原産。 アゾラ唯一の特定外来生物で、 学名のアゾラ・クリスタータが有名。 植物体はアメーバ状で小さく、 葉に目立つ2細胞の突起が多く、 根には根毛が多い。 近年減少傾向にあるとされる。
アイオオアカウキクサ(Azolla cristata × A. filiculoides) : アメリカとニシノの人工雑種、 いわゆる雑種アゾラで、 特定外来生物には指定されていない。 日本各地で見られるアゾラの大半は本種といわれている。 植物体はアメーバ状で、 葉に目立つ1、 時に2細胞の突起があり、 根にはふつう根毛が多い。
 
どちらか現状不明
ニシノオオアカウキクサ(Azolla filiculoides) : アメリカ大陸原産の外来種説が濃厚だが、 はっきりとわかっておらず、 特定外来生物に指定されていない。 植物体はアメーバ状で、 葉に目立つ1細胞の突起が多い。 根にはふつう根毛が多いが、 抜け落ちていることもある。 2細胞の突起がない点で外来アゾラと区別できる。
 
メディアのニュースなどで、 アカウキクサが外来種のような書き方をされることがありますが、 アカウキクサは元から日本にいる絶滅危惧種なので間違いであり、 むしろ保護対象です。 アゾラが外来種ととれる書き方も、 在来種を含むので誤りです。 外来種の総称でこの名前を使ってしまうと、 絶滅危惧種でも駆除されてしまうリスクがあります。 各地で増えている外来種を指す場合は、 「外来アカウキクサ類」や「外来種のアカウキクサの仲間」、 「外来アゾラ」など、 種名が分かっている場合は種名で呼ぶようにすると混乱が少なくなるでしょう。

  • アゾラ4種の同一スケールでの比較。
    オオアカウキクサが明らかに大きく、 次いでアカウキクサが大きい。 外来アゾラは小さめ。
    三角形になるのはアカウキクサのみ。
    色での区別はおすすめしない。
    写真 / S.Ikeda

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