よく食べられているシダの新芽に「赤コゴミ」があります。 クサソテツ(コゴミ)よりも赤っぽいことからそう呼ばれ、 一般に「キヨタキシダの新芽」と紹介されることが多くなっています。 しかし、 この情報は誤っている可能性が高いです。
根拠の一つは、 キヨタキシダの新芽はふつう全体が緑色で、 葉柄に黒色からこげ茶色の鱗片が多くついていること。 これに対して、 市場や通販で売られている赤コゴミは葉柄にかなり赤みがあり、 そこにはうす茶色の鱗片がついています。 この特徴は、 「イッポンワラビの新芽」の方に一致します。 さらに、 キヨタキシダがほかのシダに混じって1株だけ点在して生えていることが多いのに対し、 イッポンワラビは単独で群生しやすいため、 こちらの方が食用や出荷用にまとめて採るのに適しています。
事実、 イッポンワラビは北日本に多く分布し、 東北地方を中心に赤コゴミやアブラコゴミと呼ばれ、 山菜として長く親しまれてきました。 近年になり、 何らかの理由でキヨタキシダと混同されるようになったと考えられますが、 その経緯については詳しくわかりません。
※本ページでもキヨタキシダの新芽は赤コゴミであるとする情報を流していました。 この場を借りてお詫びいたします。
キヨタキシダ
ファクトチェックが必要なシダ
特徴
低山でよく見られる三角形のシダ。 葉はやわらかくて丸みのあるように切れ込みます。 葉裏につく胞子のう群は三日月形をしていて、 葉柄に黒っぽい鱗片がたくさんつきます。 キヨタキの名前は、 京都の清滝に由来するという説があります。
葉の長さ : 30~80cm
観察の時期 : 春~秋(夏緑性)
生える場所 : 低山の湿った林縁
分布 : 北海道、 本州、 四国、 九州、 朝鮮、 台湾、 中国、 南アジア
※正確な種の判定は、 形態を細部まで見る必要があります。
